古野のブログ

組織の硬直化は面接に原因がある

2016.05.10

面接官は、自分に似ている応募者を評価する—
新卒採用でFFSを活用していただいている企業で、面接者と学生のFFSと評価を調べてみました。すると、「自分に似ている人に高い評価をつけている」という結果が出ています。逆に似ていない相手は、理解しづらいため、理解不能=低い評価になってしまっています。
面接官すら人の子。感情や好き嫌いという情動が判断を曇らせます。
また学生側に、アンケートを取ったところ、同様に同質の面接官に好意を寄せていました。辞退率は、似ている人が面接した時より、似ていない人が面接した際に多くなっているのです。
では、なぜそうなるのでしょうか?

例えば、こんなやりとりから、発生します。
Aさん「ゼミの研究テーマは、指導教官のアドバイスをもらいながら決めました。難易度の高いテーマに挑戦したことで、教官からも褒められました」
Bさん「ゼミの研究テーマですが、少し興味があったジャンルを調べると結構深いなと思い、勝手に決めました。ゼミの教官からは、〝範囲外〟と叱られましたけど(笑)」

皆さんは、AさんBさんをどう評価しますか?
ある人は、Aさんを「ちゃんと指導を仰ぎ、社会的で、しかも挑戦的」、Bさんを「決まりを守れず、勝手に動く危なっかしい奴」と評価し、Aさんを合格、Bさんを不合格にしました。別の人は、Aさんを「人のいうことを聞き、限定的な範囲は動ける優等生だが、無難な奴」、Bさんを「勝手に判断して動ける活動派。ユニーク」と評価し、Aさんを不合格、Bさんを合格としたのです。

この面接官、実は前者はAさんの個性に似ている人で、後者はBさんに似ている人でした。
つまり、よく言われる「認知バイアス」が発生していたのです。個性が似ている-似ていないと言う理由が原因なのです。これは面接官トレーニングを受け、何度も実践をしてきた面接官でも発生しています。況や現場から駆り出される臨時面接官、リクルーターはその影響がモロに出ているのです。
さて、その結果は言わずと知れているように、似たような人が揃う「人材の同質化」を招きます。同質化は組織を弱くします。しかも日本では、現状を受け入れて維持しようとする人たちの同質化ですから、〝硬直化〟に等しい状態を助長していると言っていいでしょう。
我々がこれまで関わった多くの企業のデータから、拡散性と保全性でどちらの因子の方が高いかを比較し企業の歴史と相関があるか分析してみました。

 

 拡散性が高い   保全性が高い 
創業10年未満(25社) 37.6 62.4
10年~30年(37社) 32.5 67.5
30年~50年(27社) 23.6 76.4
50年以上(22社) 19.3 80.7

企業は歴史を重ねる毎に、保全性の人材の出現率が高まり、50年以上を経ると、なんと8割になっています。つまり、維持・継続を得意とする人材たちばかりの同質化です。これでは「変革だ」と声高らかに叫んでも、変革なんて起こりっこありません。それを得意とする人材が少数派で白けているのですから。

あるIT系の企業では、社内の人材分布を分析したところ、保全性の同質化が顕著になっていました。そこで採用担当者は拡散性の新人の比率を高めようと、一次面接では意識的に拡散性の高い人材を残したのです。しかし、保全性の高い人事部長は、データに基づかず、自分が積み上げてきた面接手法に固執して進めた結果、前年と同様の保全性比率となってしまったのです。ちなみに、採用担当者は拡散性が高く、部長は保全性が高かったのです。白けた採用担当者は辞めてしまいました。
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私自身、学生時代の就職活動で10社に応募し、一次面接を受けましたが10社とも一次面接で落ちてしまいました。学業が良かったとは言いませんが、それなりに自信があったにも関わらず…。当時は落ち込んでいましたが、原因がわかり、流石に『採用したくないよな』と感慨に耽っています。今となっては「よくぞ採用しなかった」と感謝しています。

某メーカーの担当者から「役員から、研究開発部門が硬直化しているから、何とかしろと指示があった」と相談を受けました。FFS診断を新卒採用向けの診断に導入できなかったため「面接官を設計しよう」となったのです。幸い、研究開発部門にいる人材のFFS診断は済んでいましたので、その中から拡散性の高いエンジニアを抜粋し、彼らに「自分が気に入った学生を積極的に合格させて」と依頼しただけです。すると、結果的には採用に至った学生の拡散性比率は高まっていました。

これまで、どれだけ多くの学生を集めるかが勝負であった採用ですが、今後は、将来的な人材構成を設定して、それに向けた長期的採用計画を立案することです。それを実現するには、面接官の構成まで意図的に設計することです。さらにゼロベースで改革したければ、大量に学生を集める意味を問い、集め方から面接方法や評価基準まで、今のままでいいのか根本的に見直すことから始めることしかありません。そのためには、客観的で使える人材データは必要だと思います。

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 16  B 9  C 14  D 17  E 3 / DAC

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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