古野のブログ

〝優秀〟な人材は、平時でしか活躍できない ~ 有事に活躍する人材は不満分子

2016.06.09

次世代のリーダーを育てることは、経営課題です。従って、多くの企業が取り組んでいますが、成功した話はあまり聞こえてきません。教育・研修会社に高いお金を支払っているようですが、本音として成果は出ていないようです(発注した人事部門は、認知的不協和が理由で、決して「失敗した」とは言わないので)。

その原因は、平時のリーダーと有事のリーダーの違いを定義できていないということだと思っています。そして、今求めているのは有事のリーダーのはずです。しかし、実際に取り組んでいるのは平時のリーダー育成なのです。

この手のプログラムはアクション・ラーニングが主流で、参加者にMBA的経営手法を学ばせて最終的に「事業提案、改善提案をさせる」のです。平時は、分析力や論理的思考が求められますので、知識偏重でいいのでしょう。

しかし、有事となれば…。分析や論理的アプローチでは限界(だから有事)なのですから、いくらMBA的研修をしても、そんなに役には立たないのです。(知らないより知っている方がいい程度)

 

つまり、平時のリーダー育成であれば、今優秀な人材を選び、分析力を養うことは適しているでしょう。しかし、求めているのは有事のリーダー。その有事に向くリーダーの潜在力が何かを知らないために、人選からプログラム内容に至るまで、間違った方法にお金をかけ、そして、それなり(お勉強はした程度)に終了しているのです。その中で一番の元凶は『人選にある』と明言しましょう。

有事型リーダー育成は「正解がない世界で、新たな道を指し示せるかどうか」を問うべき。そのためには、追い込まれてもぶれない強さが必要です。つまり信念を引き出すための心理的葛藤を仕掛けることなのです。そのためには、素材としての潜在力に注目すべきなのです。

 

では、多くの会社の人選はどうなっているのでしょうか。

この手のプログラムの参加者は、現場の長の推薦が一番多く、次に人事部門が情報を集めて抜擢しているようです。ただ、どちらも現時点の評価であり、「仕事が出来る」「上司からのウケも良い」ということになってしまいます。

これは上長からすれば「評価しているよ」と示すことになりますし、学べるということで「これまでの成果に報いる」プログラムでもあるのです。

従って、今、結果を出していない人材を流石に選びません。

例えば、「上司から煙たがられている人材」「文句の多い人材」「失敗が多い人材」等々は避けられるようです。
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以前、弊社で「本当のリーダーはどこにいる」を出版しましたが、その中で解説している基準を改めて紹介しましょう。

「実力がある/実力がない」を縦軸に
「不満がある/不満がない」を横軸にして、4象限を作ってみます

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この中で、現時点で選抜されているのが(1)の「実力があり/不満がない」人材です。優秀なんです。今活躍しているのです。そして今評価されているのです。

つまり、これまでの延長線=つまり平時では、今後も活躍が期待できるでしょう。しかし、「問題意識、課題認識、目標設定、目線が低い」から、現状に特に不満を持っていないのです。例えば、目標が大きければ、または危機感があれば、今のままでいいはずがありません。そこがないのです。従って、このグループがプログラムに参加すると「失敗したくない」ことが先立ち、「確認が多い」「答えを求めてくる」傾向が強いのです。

また、人事部門も同様の反応を示します。知り合いの研修会社の社長は、「事業提案のプレゼン会に社長が出席するので、参加者が恥をかかないように仕上げを手伝って欲しいと依頼されることもある」とのことでした。

 

次に(3)の「実力がない/不満がない」は、自分の実力に気づいているので、不満はありません。あくせくするつもりもありません。上昇志向もありません。定時で帰り、週末や休みはきちんと取り、家族や子供、プライベートの時間を大切にしています。「ワークライフバランス型人材」です。彼らは、今はいいかもしれませんが、35歳以降になると〝使えない人材〟と評価されます。会社としては扱いに困る人材になる確率が極めて高いのです。

余談ですが、ある会社で「評価の高い/低い」と「拡散性と保全性」と「辞める/辞めない」と時期を分析した結果、入社10年以上では「評価の低い、保全性(維持・継続を得意とする)は辞めない」という結果になっていました。早く成功体験を味わい、少しずつ積上げないと厳しいのです。若い時期に追い込まれて乗り越えた経験のない保全性の育成、活用には会社は困っているのです。

つまり、今世間で広まっている〝ワークライフバランス〟はかなり近視眼的であり、注意をする必要があると思います。

長期的な視点で考えれば、収穫の年代、熟成される年代(40代~50代)で面白い仕事、責任の重い仕事に従事し、また家族(子供たちも多感な年齢になっている)との時間を大切にしたりプライベートを充実させるには、基礎力をつけるべき20代~30代(独身時代でもあるし)は限界まで働くことです。つまり、若い頃は「ワークワークワーク」でいいのです。つまり、長期的な意味で「仕事と人生のバランスを取る」という考え方にシフトすべきだと思いますよ。今叫んでいる方々は、かなり無責任ですよ。

 

さて、有事のリーダーになりえる潜在力を持っているのが(2)の「実力があり/不満がある」人材です。

彼らが「候補者である」と言う理由は二つです。

一つ目は「実力があるので、不満があれば転職も可能であるが辞めていない」ことです。つまり、会社の理念や経営者、商品やサービス等、愛着があったり、居たい理由があるということです。次に、不満の原因は「仕事は出来ているので、そもそもの課題意識や目的意識の高さ、目線の高さ、疑問」から発しているのです。つまり、高い目標があれば、「今順調であっても、このままでいいのか」という危機感が生まれます。それが大切なんです。

その不満のエネルギーは、「そもそも変だよね」ということがきっかけですから、「正したい」「変革したい」「挑戦したい」というベクトルに変えるだけで、いいのです。

(4)の「実力ない/不満がある」は他責的です。ただ、実力があるかどうか現業での評価ですので、研修メンバーに入れて追い込めば、「あるかないか」はすぐに判明するでしょう。

 

この(3)のグループを『不満分子』と我々は命名しています。愛すべき不満分子です。

もう少し噛み砕いて説明すれば、
「本質を衝くから煙たがられる」
「理想が高いから文句を言う」
「挑戦するから失敗が多い」という人材です。上司から見れば扱いにくい部下ですね。決して推薦したくないでしょう。

 

日経ビジネスで、大須賀幸三さん(元副社長でウォークマンの生みの親)は、会社を立て直せるのは、〝有能な不良社員〟と述べています。

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本来はものすごく豊かな発想で、アイデアをたくさん持っているエンジニアがいるはずなのに、管理屋に経営を牛耳られて不良社員化しているだけだから。リストラで抜けた人もいるけれど、不良社員化して社内に残っている人もいるはず。
そういう人たちは、成果報酬や業務の効率化で自由な開発ができなくなって、息苦しくなって、やる気を失っているだけなんだ。“有能な不良社員”をいつまでも社内で腐らせておくのはもったいない。
ゼロを1にする人と、1を100にする人は別モノなんだ。そこそこ優秀な技術者なら、1を100にすることができるかもしれない。けれどゼロの状態を1にできる人はなかなかいない。そういう人はこだわりが強くて、奇人変人と呼ばれる類の人かもしれない。そんな人材をマネジメントできないと、新しいモノやおもしろいモノは生み出せないよね。

 

まさに、我々が命名した不満分子と大須賀さんが述べている「不良社員」は、同じ意味合いがあります。そんな人材を発掘し、引き上げられるかが、企業の次世代を託せるリーダー候補であり、変革力にもつながるのです。

 

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 14  B 10  C 15  D 17  E 4

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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