古野のブログ

本質を問いかける2 「何を管理するの」

2016.10.11

先日、知り合いから、こんな話を聞きました。
某メーカーのAさんは社内研修に必要なため「レーザー・ポインター」の購入稟議を総務部門に挙げた際、安全管理の部門から電話がかかってきたそうです。
「使用や保管状況に関するルールが安全基準に達しているか知りたいので、関連資料を提出してください」と言われたのです。
「これ、ポインターですよ」と説明すると「では、構造のマニュアルが欲しい」となったため、Aさんは、そのポインターの製造・販売メーカーのホームページを伝えて、「自分で見てください」と頼むと、「時間がないので、資料をコピーして届けて欲しい」となったということでした。
Aさんは、面倒はなことは止めて、その稟議を破棄し、次に「携帯式 拡張型ポインター」という名称にして、稟議を出したところ、難なく承認が出たのです。
「レーザー」という言葉に、『どんな機器か? 安全管理上の課題は何か』と過敏に反応しただけだったのです。

一方、こんな話もありました。製薬メーカーでの話です。
全社的に人件費削減の関係で、部屋の清掃の外部委託をやめて、社員が交代で掃除をすることになったようです。
しかし、Bさんは「世間より高い時給の我々が、交代とは言え一日30分近く掃除だけに費やすのは無駄じゃないの」と考え自動掃除機である「ルンバ」の購入を課長に提案したそうです。課長の決裁権は10万円までありますので、6万円程度は簡単に決裁されるものと考えていたようです。
しかし、その課長の反応は違いました。
「なに? ルンバ? それは他の部署で導入されているのか」と調べ出したそうです。総務に確認したり、他の事業所や研究室に直接問い合わせたり。そしてやっと導入している部門を見つけたのです。そこは横浜の事業部にある部門だったようです。Bさんがいる研究室は埼玉にあったのですが、課長は一日を費やしてヒアリングと称して横浜に出向いたのです。
事前調査、アポ取り、実際のヒアリング等々、この案件に「数日を費やしたのではないか」とBさんは見ています。
簡単な意思決定にも関わらず、多くの時間をかけないと決められなかった課長は、その後〝ルンバ課長〟とあだ名をつけられました。もし、他部門に導入事例がなかったら、決められなかったのでしょう。

「レーザー・ポインターに過敏に反応した安全管理室」と「決められないルンバ課長」。彼らは、これまで社内で評価され、それなりの9a8d8bfdeb069120f39ebcd64a8cfc25_ssポジション、職位に付いていたのです。大手企業の立派なビジネスマンなのです。

彼らの仕事は何なんでしょうか?
・無駄を作ること?
・部下や仲間のやる気を削ぐこと?
いや、まじめにやっているつもりなんでしょうが。

笑い話として、酒の席では盛り上がります。「ポインターの安全管理基準は」とか「ルンバ課長」とか。しかし、企業全体の人材論とすれば、笑い話では済まない悲劇ではないでしょうか? 皆さんの会社でも多かれ少なかれ、この手の話があるはずです。

さて、原因は「自分で考えずに、答えを探しに行く」こと。次に「マニュアル通りに対応しようとする」ことです。どちらも自分の頭を使っていないことになります。

「普通に考えたらわかるだろう」と言いたいところですが、〝普通に考えられなくなっている〟のです。これは何が原因なんでしょうか?
仕事の本質は何なのか、もう一度考えてみませんか?

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 16  B 9  C 14  D 17  E 3 / DAC

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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