古野のブログ

「相互評価って何」 3回シリーズ‐1 /リーダーが一番貢献していなければならない

2017.06.08

今回は「相互評価について」考えてみましょう。但し、長くなりますので、3回に渡って紹介します。

毎年お手伝いしている新人合宿が、4月半ばに終わりました。
この会社はサービス業界の大手です。多拠点で展開しているため社員は若くして拠点の責任者になります。そのため合宿の狙いは、リーダーシップを養うことなのです。
さて、一週間の合宿の間、全て5名~6名のチームで活動します。合宿スタート時にチーム編成を伝え、自分たちでリーダーを決めてもらいます。

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合宿の中盤に差し掛かるタイミングで必ず『相互評価』を組み込みます
ここで言う相互評価は「誰が一番チームに貢献しているか」という基準だけで、相互に点数を付け合う評価のことです。
ルールは、自分は3点。他の人には3点は付けられず、自分よりも貢献が低いと思えば1点か2点。自分よりも貢献は高いと思えば4点か5点を付けるというものです。
それぞれが付けた点を合計して合計点が大きい人が貢献度一番となり、順番を出すというものです(下の表参照)
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さて、この相互評価をすることで、いくつかのことを学んでもらいます。
一つ目は「リーダーは一番貢献していなければならない」
二つ目は「評価は何のためにするのか」
三つ目は「成果を出すにはチームリーダーシップだけでなく、メンバーシップも重要である」ことです。

リーダーが一番貢献していなければならない
評価基準は「チーム活動での貢献度」が唯一というものです。チームは5~6名のメンバーで構成されています。いいチームは活動していく中で、それぞれ役割が自然に生まれてくるものです(そうなるように編成している)。ただ、まだ数日ですので各自の持ち味が発揮されるほどの時間ではありません。この段階で役割が決まっているのはリーダーだけなのです。講義や食事の時に点呼を取り、資料の配布や回収、さらに事務局とのやり取りも全てリーダーが中心となります。チーム対抗でプレゼンテーション大会をしますが、それをリードするのもリーダーなのです。つまり、一番目立つし、役立っているはずなのです。
しかし、チーム員がそう思っていないと、相互評価の集計でリーダーが一番になりません。つまり〝他に頼りになる人かいた〟ということなのです。
この結果は、合宿の後半もリーダーを続けるのか、交代してもらうのかの判断材料に使います。ちなみに翌日は、十数時間をかけて山を走破する活動があります。体力的にも精神的にもタフで危険を伴う活動のため、強いリーダーが必要であることと、メンバーの士気を高める狙いもあり、相互評価を組み込んでいるのです。

さて、計算は事務局でおこない、リーダーが何番目だったのかだけ全員に向けて公表します。リーダーが「一番貢献している」になれば、OKなので「リーダーはそのまま継続」ですが、2or3番目であれば、そのチームに対して「リーダーを交替するか、そのままの継続でいくのか」を議論させます。また、4番目以降であれば、強制的にリーダー交代を命じます。
49チームの中で「そのまま継続」が約半数の26チーム。強制的に交代が10チーム。残りの13チームは、そのままか、交代するかの議論をしてもらったのです。
交替するかどうかを議論した13チームでは、議論の結果3チームが「交代」を選び、10チームは「そのまま」を選択したのです。
交代を選んだチームの議論を紹介しましょう。

このチームではリーダーの評価は二番目でした。
リーダーはA君でした。A君は貢献が不十分だったことを反省し「継続してやりたい」と申し出ました。
すると、B君がこんな話をし始めました。
「実は、最初リーダーを決める時、自分もやりたいと思ったけど、A君が手を挙げてアピールした時に皆が同意している感じを受けたので、思い留まったんです。思いを言えない自分にもどかしさを感じてました。リーダーを選ぶ機会が再度巡ってきて、今言わないと後悔すると思ったので、言います。リーダーをやってみたいです」
すると、それをきっかけにそれぞれが自分の思いをぶつけ合うことになりました。
「実は俺、B君が一番貢献していると評価した。A君も頑張っていたけど、俺たちのことを親身になって考えてくれていたのはB君だと思ったからね」
「僕は、A君を評価した。率先しようとしてくれていたからね」
「僕は誰々に5点」「私は誰に2点つけました」等々それぞれが誰を評価したのかを開示しだします。
そのうち、A君が「ところで、リーダーってどうあるべきか? 自分はリーダーだったけど悩んでいたので」と疑問を投げかけました。
ひとしきり「リーダーとは」を議論したあと、「自分はリーダーでないけど、どうチームに貢献するのかを考えていた」と発言するメンバーも出てきました。
それぞれ腹を割った議論が展開されて、最終的にB君をリーダーに選出したのです。そしてリーダーを降りたA君は、「僕は反省したことを活かしながらB君を支えます」と宣言したのです。

さて、ここで紹介したチームは、翌日の山走破はリーダーとメンバーが機能し、チームとして団結力が最高となり、時間配分やメンバー全員の健康状態も維持しながら、最短時間で走破したのです。

一方、リーダー交代をしなかった10チームでは、様々なトラブルが発生しました。
過酷な体験の中で、足腰に疲労が溜まってきます。筋肉痛や関節の痛み、ふくらはぎが突っ張っている状態、足の皮がむける等々、精神的にも追い込まれてきます。
それぞれが自制心を無くし感情が抑えられない状態になってくることで、リーダーに絶対的な信頼を置いていないメンバーからは、リーダーの掛け声が〝無理を強いている〟ように聞こえたり、苛立ちさえ感じるようになってきます。
「リーダーだけが盛り上がっているが、皆白けている」
「一人で勝手に、前へ前へ歩いている」
「チーム全員で完走しようと気遣っているが、限界にきている人を連れていることで全員が間に合わないのに、決めきれない」等々

その結果として、チームの活動が外部から見て手に取るように判明し出します。
・休憩時にリーダーだけがポツリと一人になっているチーム
・同じチームなのに、先頭と最後尾で数十メートルも間隔が開きバラバラになっているチーム
・全員が下を向き、元気なく歩いているチーム

これらのチームは、ワークを振り返るセッションではチーム内で発生した人間関係のトラブルや葛藤を書き込んでいました。
「人間関係が破綻していく展開を濃縮して体験した」
「追い込まれて自己中心的になってくると、チームは崩壊する」
「この人に命を預けられるか疑問に思った。リーダーってそんな人なんだ」
「仲間ならいい奴だけど、リーダーとして頼りになるかならないかを考えるべきだった」
「前日にもっと議論しておけば良かった、と後悔した」

「リーダーシップを鍛える」ためには、成功も失敗も体験させることしかありません。但し、チームなくしてリーダーは成立しませんから、チームとしてのダイナミズムが味わえることが、体験なんです。時間が限られているなら、ダイナミズムを触発させる仕掛けが必要で、それがこの「相互評価」なのです。
彼ら新人は、苦手な相手との付き合いを避ければよかった学生時代とは異なり、嫌でも一緒に仕事をしなければならない職場に放り出されます。誰もフォローしてくれません。だからこそ、「評価し合わなければならない」くらいの濃い人間関係を体験させることなのです。

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 14  B 10  C 15  D 17  E 4

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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