古野のブログ

「有害な人材」なんていないのに

2017.09.12

ハーバードビジネスレビューの論文が紹介されていました。
「有害な人材」という表現にカチンときました。

そもそも、生まれついて「有害な人」はいるはずはありません。我々の理念であり根底の哲学では、『一人としていらない人材はいない。ただ、合う/合わない、向く/向かないはある』つまり、向くところ、合うところに配すれば、全ての人は役に立つ存在ですよ、ということなのです。

おそらく、〝ストレス〟という刺激が、人の行動をポジティブにしたり、ネガティブにしたりする(表出が変わる)ということを知らないから、「有害な人」とひっくるめたのでしょう。

研究では、有害な行為の予測因子となる特定の性格と行動特性も明らかにしている。
自信過剰、自己中心的、生産性が高い(自己申告による)、規則遵守の意志、という特性を示した従業員は、有害人材となる可能性が高い

また、別の研究からの引用として

「邪悪」な性格(サイコパシー、ナルシシズム、マキャベリズム)の持ち主は、そのパフォーマンスとは関係なく仕事で成功することが少なくない。カリスマ性、好奇心、高い自己肯定感といった、他の有益な特性を持っているからだ

ただ、有害といいつつも、生産性が高い、仕事で成功することが多い等、肯定できる要素も見出しているのです。それを認めて、人の問題ではなく「環境変数」の影響で表出が変わると言えば、事は簡単なんですけどね。

FFS理論ではディストレス状態になると
A 指導的な人が「独善的」「支配的」
B 養育的な人が「介入的」「自虐的」
C 合理的な人が「機械的」「自己都合的」
D 創造的な人が「破壊的」「攻撃的」
E 几帳面な人が「拒否的」「追随的」
になることはありますが、同一人物です
あえて、ハーバードビジネスレビューの指摘に置き換えると(やや無理があるのは承知として)
D→自信過剰、自己中心的、ナルシシズム的、サイコパス的
C→自己都合的(中心にも見える)、マキャベリズム的
A→規則遵守、ナルシシズム的

では、何が(誰がと言うべきか)、その人をディストレス状態にさせて、『有害』というレッテルを貼るのか?
それは外的な環境とのマッチング。つまり「人間関係との相性」「仕事や業務との相性」なのです。
人間関係は特に身近な人になりますから、一番影響しているのが上司です。

D→独創的で自由闊達に動きたい人の発想や行動を制限したり、馬鹿にする
C→合理的な判断を塞いで、理不尽な判断や指示をする
A→あるべき姿を目指していているのに、それを頭ごなしに否定するpixta_25926148_M_S

その結果、当事者はよりアピールしようと過剰となり、上司から見ればネガティブな行動と映っているのでしょう。これが『有害な人材』の真相です。

ある会社で「職場の困ったちゃん」とレッテルを貼られている人と面談をする機会をもらいました。案の定、その職場に来て、やることなすこと否定されたり、制限されたり…「自己肯定感はなくなってしまった」と告白していました。その人のデータはADCだったのです。

人にレッテルを貼るのは、楽かもしれません。しかし、それでは何も解決しません。

「ディストレスによる表出の変容である」ということがわかれば、ストレッサーとなる環境を変えることで、ユーストレス状態となり、逸材となるのです。
有害ではなく〝逸材〟が皆さんの身近にいるのです。

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 16  B 9  C 14  D 17  E 3 / DAC

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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