古野のブログ

予防人事という発想「人間関係はあきらめる問題ではない」

2020.10.27

 今年もFFSカンファレンスを開催しました。もちろん、リモートで、ですが…。
 FFSのASPを導入していただいている5社から事例発表もしていただきました。

 その事例の中で一つ紹介したいのは、『予防人事』という発想です。
これは、M社が提唱されたものです。まさに、FFS理論ならではの目指したい考え方ですから、共有したいと思います。

 では、この予防人事とは、どんなことを指すのでしょうか?
 実は「予防医学」に準じて
一次予防(健康増進、疾病予防)→ 問題予防     → 理念浸透/採用ミスマッチ防止
二次予防(早期発見&早期治療)→ 早期発見&早期対応 → ストレス診断、1on1面談、異動
三次予防(悪化防止&社会復帰)→ 悪化防止&現状復帰 → フォロー面談、モニタリング

 単純に言えば、離職やメンタル不全、生産性の低下等を「未然」ないし「早期」に防ぎ、最悪、休職した場合でも復帰する際は最善な受け入れ態勢を取るために「採用」から「オンボーディングとしての配属先決定」「1on1面談アドバイス」「マネジャー支援」「異動・配置・抜擢」「個人のキャリア相談」まで、人事ができることに取り組もうということです。

 さて、FFS理論をベースにした『予防人事』を実践していく上で、ポイントになるところが二つあると思っています。

一つ目が「一人ひとりの個性の違いを明らかにし、活かすこと」
二つ目が「人間関係を設計できること」です

この二つを説明していきましょう。

何度かこのメルマガで語っていますが、ほとんどの現場マネジャー(課長クラス)は、プレーイングマネジャーで、プレーヤーとして優秀でマネジャーになったのであり、人マネジメントは「ほぼ素人状態である」ということです。
従って、部下育成や動機付けは、自分のパターンを参考にして〝良かれ〟と思っていることをしていますから、自分に似た部下であれば、上手くやれていて、異質な部下であれば、すれ違いやミスコミュニケーションの原因になったり、場合によれば意図せずにストレスをかけているのです。
単純に「お互いの個性の違いを知らないことで発生する問題」として事前に知っていれば、かなり解決できることなのですが、「知らされていない」のが実情です。
二つ目の人間関係も考え方は似ていますが、組織生産性を高めるためにはチームとしての組み合わせ=「人間関係」が重要で、FFS理論では「同質関係」と補完関係「垂直補完」「水平補完」の二パターン三種類があり、期間や取り組むテーマで、最適な組み合わせがあるのです。
しかし、多くの会社では、そもそも「そんなことが出来る理論があると思っていない」し、関係性に興味は持たないため、効果的な組み合わせは設計されていませんし、把握さえされていません。

たまたま「似ていた」ので上手くできたケースもありますが、同質関係は短期的に有効であっても、長期的、広範囲な問題に取り組むには、不向きです。それを知らないまま、上手くいっているからと言って、そのまま維持して長期間組ませている場合は、生産性の低下を招いてしまいます。しかし、「同質であることが問題」にもかかわらず、その原因を把握しないまま「叱咤激励」するしかありません。
異質補完関係は、お互いが理解して補完が機能するまでは時間がかかります。途中で嫌になって脱落する人が出ないとも限りません。せっかく補完だった関係性が、知らないが故に、前半戦の嚙み合わなさが原因で途中解体されてしまうこともあるのです。

これまで「人間関係」は、なんとなく「相性が良い/悪い」と主観的なモノとして扱われてきました。多くの会社では今もそうでしょう。
しかし、FFS理論では、関係性を分析し可視化できるので、短期か長期か、課題が狭いか広いか等の条件により、成果に繋がる「良い組み合わせ」「悪い組み合わせ」と判定できるのです。このことを理解しない限り、予防人事に取り組むことはできないでしょう。

 厚労省の調査によると、メンタル不全になった一番の原因は、「職場の人間関係」というデータがあります。また、離職した人に理由を聞くと「人間関係が嫌だった」という回答がかなり出てきます。業務負荷が高い看護師や介護士の離職理由は「仕事はきついのは最初からわかっているので特に辞める理由になりませんが、職場の人間関係には我慢できません」とコメントをよく聞きます。
つまり、会社の理念や方向性、業務内容・職務、報酬等の処遇には、それなりに満足なり、妥協出来ていても、日々仕事をする上で、一番身近である〝人間関係〟は我慢できないのです。

育成という面でも「成長が遅い」「早い」のは個人の能力というよりも、トレーナー(教える側)とトレーニー(教わる側)の関係に影響を受けているのです。

これまで会社で働く多くの人にとって、〝職場の人間関係は与えられた環境〟であり、「どうしようもないもの。仕方ないとあきらめるもの」というのが現状だったのです。

しかし、M社は「解決できる問題」として取り組んだのです。また、ユーザーのW社も同様に解決できる問題として「人事異動」にメスを入れました。

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個別の取り組みを簡単に紹介します。
〇M社の取り組み
診断と自己理解ワークショップをセットにして自己理解を促進した
上司-部下が相互にデータを閲覧できるようにした
体験をして興味を持った人から、そのチームを分析し、「活用したい気持ち」にさせた
結果的に「有効なツール」という理解を促進した

〇W社の取り組み
ストレス値を3か月毎に診断している
上司と部下の弁別性因子に乖離があり、2回連続でディストレス状態(悪い状態)だった場合、上司のヒアリングを通じて裏を取り、「異動候補者」にした
幹部会議(責任者も運営チームに加えている)で決定した
異動先で、ストレス値の改善、生産性の向上をウォッチした
その結果、リテンションに成功した。さらに4人は異動先で活躍している

「予防人事」としての、二社の取り組みはいかがでしょうか?

この二社の担当者たちは、熱い気持ちを持ち、現場に寄り添ってくれています。
「企業は人なり」この言葉をお題目にせず、そろそろ実践していきましょう。

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 14  B 10  C 15  D 17  E 4

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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