古野のブログ

本質を問いかける1 「アセスメント研修は有効か?」

2016.09.21

ここのところ、2か月ほど書けませんでした。何度か書いては消し…。
つまり、言いたいことはたくさんありますが、まだ整理できていないと、筆が途中で止まってしまいます。最近、テレビや新聞、雑誌等の記事をwebで見て(もう買って読まなくなりましたが)も、表層のことが多いという気がしてなりません。これは本質的な話が通じないからなのか、それとも本質を問わないからなのか? 少し危惧しています。今回は『本質を問う』ということで、少し連載的にまとめてみました。

つい先日、あるメーカーの開発部門のS課長とIさんが組織活性について打ち合わせをしていた時のことです。「今のチームを任せる人材が少ない」と言う話題になった時、Iさんが「今週、誰々さんが管理職昇格のアセスメント研修に参加していますよ」と言うと、「そうそう、事前に対策会をしたからね」とS課長が答えたのです。
「アセスメント研修って、インバスケットやらですか?」と聞くと、
課長は、以下のように語り出したのです。
 

それです。自分も受けましたよ。自分は日常的に部下に何気なく「なんで出来ないの?」と詰めちゃいます。それをすると、「アセスメントでは評価が下がる」ということを対策本で読んで、3日間の研修の間は、求められる人物を演じました。3日間程度なら、擬態できるし。
それから、「こんな時、あなたはどうしますか?」という質問が書かれたテストがありましたね。あれって本当にナンセンスですよ。
例えばリアルであれば、解決策を書いた以上、責任がある。それをするかどうかは内容含めて実行力が問われるでしょう。ただ、このテストでは何を書いても責任を問われなのです。だから理想的な回答は書けますよ。それで評価されるんですよ。
僕は、無事昇格したけど、こんなアセスメント研修の評価で、「リアルに昇格なんて決めていいのかなぁ」と疑問を持っています。

 
さらに、疑問は続きます。
 

研究・開発部門の人間は、会議を仕切ることが多いから会議には慣れていますが、製造部門の人は慣れていないようで、日頃の会議では、ほとんど質問をしません。それなのに、アセスメント研修では「はいっ、と元気に手を挙げて、質問を投げかけるんですよ(笑)。
開発案件でのプレゼンをすると、またまた製造部門出身の役員がプレゼンに出て指摘されることがあります。そんな時ほど「製造の人がアセスメント研修でするように、日常の会議でも質問して欲しかったなぁと思います。結局もう一度やり直しで二度手間になりますからね。

別のメーカーの管理部門の責任者Tさんは、アセスメント研修について、こんな話をしてくれました。
「僕は何度かこの手の研修を受けたけど、毎回同じような間違った評価をされます。インバスケットのポイントを知っているので、無駄なく会議を仕切って結論出しを推進します。アセッサーの評価は常に『意志の強いリーダーですね』と言われます」
実は、この人はとても慎重な人で、事前準備を怠らない人なのです。アセスメントがあるとなれば、徹底的に調べて「どんな態度が好ましいか」と「どうすれば、どの評価になるか」を熟知して、そのように行動するだけなのです。つまり、理想的なリーダー像を徹底して演じるのです。アセッサーがどんなにプロであっても、見抜けないようです。「ちゃんと準備をすれば、評価はされるはずです」と。

逆にアセスメントで高い評価を受け昇格したが、「昇格させたのはおかしいのでは」という顧みがおこなわれたケースです。これは別の製造メーカーです。

部下が疲弊して、メンタル不調寸前のメンバーが数名出るほど問題となっている部門がありました。その部門は外部との窓口になる部門で、内部との調整が多い上、外部のメンバーをリードしていく必要もあります。そのマネジメントですから、他部門の役職者よりも複雑な意思決定が求められていました。
我々が分析すると、「マネジャーに問題がある」と結論に至りました。そこでどんな経緯で昇格になったかを聞くと、「アセスメント研修で評価が良かったから」ということだったのです。そこで昇格前に参加したアセスメントの評価結果を見せていただきました(本来は極秘扱いですが、検証のため)。
総じて、評価が高かった項目を整理すると
・傾聴力がある
・まとめることが出来る
・議論をリードできる
・プレゼン能力がある  こんな評価でした。
FFS診断では、受容性が高く、保全性と拡散性が拮抗している人物です。面倒見は良く、丁寧で活動的な面もある。仲間の中でムードメーカー的存在となり、〝ミッキーマウス的リーダー〟(人気者としてクラスのリーダーに推薦されるような)になりやすい個性だったのです。つまり、権限や責任がない状態であれば、仲間の話を聞いて、元気にさせることが出来る良きリーダーなのです。
しかし、かなり非情な意思決定が求められる場合は、〝荷が重い〟と言わざるを得ないのです。研修(実際に責任を問われない)では、まさにクラスのリーダーとしては評価をされたのでしょう。

さて、3つの事例から考えて、アセスメント研7c886f1693dd084b876d29dc17896220_ss修は本当に有効なんでしょうか?
この3つが特別だったのでしょうか? 彼らの話を聞いていると、かなり限定的な状況下での行動や態度を評価するものでしかなく、「アセッサーの評価を鵜呑みにする」ことは、やはり無理があると言わざるを得ません。

そこで、S課長が、部下や後輩にアセスメント研修の対策をしていると聞いたので、その意図を尋ねました。
「無駄だと思っているのに、何をされているのですか?」と。
すると
「部下に早く昇格して欲しいという気持ちはあります。ただ、それよりも、『マネジメントでは、こんなことが求められるよ』と事前に意識を喚起したい」というのです。つまり、単に合格のためのテクニックではなく、「そもそも、どうすれば会議が活性化するのか、マネジャーとして何をどのように意思決定をするのか、学べる対策会にしているのです」と回答してくれました。

会議の在り方にも疑問を持っていましたので、議論してみました。
会議での仕切や貢献が重要なら「1年間にある全ての会議を記録し、どれだけ貢献できたかを評価すればいいんじゃないか。研修にかかる費用をそちらに回せば良い」と盛り上がりました。

このS課長は、現場で実績を積み上げてきた人です。現場の課題をよく捉えていると思います。
一方、多くの人事部門は現場を知りません。知らないので、自分たちで評価できないし、現場に出向いて聞き取り調査もしない。その結果として、「客観的な物差しが必要だ」という理由からでしょう、さらに現場を知らない外部の専門家に〝重要な評価〟を外注するのです。

さて、このS課長と、アセスメント研修に頼る多くの人事部門、どちらが本質を捉えていると思われますか?

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 14  B 10  C 15  D 17  E 4

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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