古野のブログ

人事権とは戦略であるはずだが…

2023.02.27

FFS理論を採用して頂いている企業に「人事異動」に関する調査をさせていただきました。概略は「人事異動は如何なる起案者と決裁者が、如何なる理由で実施し、結果的に如何なるプロジェクト等に反映させているか」を知りたいと思ったからです。

一般的に、人事異動は、起案者が決裁者に稟議書を提出して行われます。起案者が居なければ実施されません。「起案者」と「決裁者」の間で、どのような情報のやりとりがあるのかも重要な視点となります。但し、今回はそこまで深堀はしておりません。

昨年の年頭の挨拶で「FFSを人事施策の根幹に置いて欲しい」とお伝えしました。FFSは、「泥臭く現場に寄り添う人事」(ミクロ的)と、「競争優位の源泉としての戦略人事」(マクロ的) を繋げる理論だからです。それから1年。どう浸透してきたのか、その実態を把握したいと思ったのです。どこまで読み解けるのかわかりませんが、我々なりにまとめてみました。皆さんの今後の活動のヒントになればと思います。

ご協力いただきました皆さん、この場を借りてお礼申しあげます。導入企業100社の中から26社の結果になります。

 

【1】部門内の異動プロセス

各部署で決める 69.2%

人事部と各部署の双方が協議しながら決める 19,2%

◇その最終決定者

人事部長 46.2%

役員・経営者 46.2%

⇒ プロセスは想定していた通り妥当な結果です。

最終決定において、何をもってOK/notOKなのか?

 

【2】部門を越えた異動プロセス

人事部と各部署の双方で協議しながら決める 65.4%

各部署で決める 7.7%

◇部門を越えた最終決定者

役員・経営者 80.8%

人事部長 7.7%

⇒ 部門を越えるケースなので、各部署だけで決められないのは妥当ですが、人事部側の「意図」と「現場ニーズ」を、どう折り合いをつけるのか?

「部門のテコ入れ」等を意図するなら、「組織開発」や「役員・経営陣」の関与がもっとあっても良いのではないかと思います。

 

【3】部門横断のプロジェクトや新事業メンバーの抜擢、組織異動のプロセス

人事部と各部署の双方で協議しながら決める 46.2%

各部署で決める 15.4%

その最終決定者

役員・経営者 69.2%

各部署の部門長 23.1%

⇒ これは意外な結果でした。もっと役員・経営層がコミットしていると想定していました。誰がリーダーなのか? どんなチームなのか? が成功確率を高めるからです。

 

【4】抜擢する人材を捜していますか

積極的に探している 26.9%

探している 50.0%

⇒ 「積極的」が曖昧なので、回答しづらかったかもしれませんが、約1/4は少ない印象です。「探している」までを含めると3/4ですから、『関心事』には間違いありません。

 

【5】組織編成にFFS理論を活用しますか

すでに活用している 38.5%

活用する予定がある 15.4%

活用において課題がある 38.5%

⇒ 「フェーズ3」に至ったのが約1/3ということです。予定を含めて約50%です。まだ活用に至れていないということは、我々の「支援不足」という課題でもあります。

 

そもそも「人事異動」って何を狙いとして実施するのでしょうか?

 

人事異動_イラスト

会社側には基本的に3つの意図があるはずです。

1つ目は、部・室・課・チームの「成果を出すため」です。2つ目は「癒着」や「マンネリ化」を防止するためです。そして3つ目として「ジョブ・ローテーション」(サクセッションプランも含めて)を実践する手段になります。

 

個人側から考えてみましょう。

何を学び、体験し、スキルや領域を広げていく「キャリア」の問題になります。また新卒の場合は、初期の成功体験と高い評価がその後の昇進や抜擢などに繋がりますので、〝一生を左右する〟ほど最重要なことなのです。それを理解した会社は「オン・ボーディング」として取り組み始めたようですが、まだ「場当たり的な取り組み」をしている会社も多いようです。

Webで「人事異動」を検索すると「人事ガチャ」「配属ガチャ」が出てきましたので、少し驚いています。異動・配置替えの不合理さを揶揄しているのでしょう。

異動の意思決定は、ほぼ「会社の都合」でしょうから仕方ないとしても「説明責任を果たしていない」と受け取られているのでしょう。それは、その通りだと思います。

 

さて、各質問について、コメントしていきたいと思います。

「部内の異動」のプロセスは想定内なのですが、決定者は少しわかれました。

決裁する側にどんな情報、例えば「組織評価、課題、原因、対策」が明示されているのかです。それがあればOKかOKでないかの判断は出来ますが、それがない場合「承認」は、『盲判』となってしまうのです。データ活用のレベルをさらに深堀していく必要がありそうです。

 

「部門を越えた異動」は「人事部と各部署の双方で協議しながら決める」が65.4%です。

おそらく、多くは人事側が起案し、部署側が「難色を示す」構図が見えてきます。そのためには「人事側の意図」が大切になります。ビジネスパートナーとしての「事業成功」と「ジョブ・ローテーション」のバランスを如何に取るのか? 短期的というよりは、将来に向けた意思決定でしょう。現場はどうしても短期的視点に陥りますので。

従って、最終決裁者は役員・経営者が8割というのは妥当でしょう。

 

意外だったのが、「部門横断のプロジェクトや新事業メンバーの抜擢、組織異動のプロセス」でした。経営マターとして、経営層がもっと起案プロセスにコミットするだろうと想定していたからです。

我々が日頃から伝えているように「新規性や創発を求めるチーム作りの成否は、人選次第」だからです。〝異質な個性と個性を組み合わせて補完させる〟ことが、創発を生み出るポイントです。

過去の経験やスキル重視では、「正解を捜す行為」に陥ったり、優等生的な解答に終始しがちです。どちらも想定内で、たかが知れているレベルです。

新規軸や新価値の創造には、一度〝混沌状態になり、それを突破する〟ことが必要になります。だからこそ、異質を組み打合わせて、触媒役が火をつけることで、チームとしてシナジーを出すのです。今、評価されている優等生よりも、扱いにくい人や問題児である場合が多いのです。そんな人選は、人事部や現場の人は怖くて出来ないでしょう。つまり、責任を負える経営層しか出来ないのです。従って、「人選の重要性」をもっと伝える必要性を感じました。

 

次の質問「抜擢する人材を捜している」は約8割弱です。一般的な人事部門のアンケートで最大の関心事は、「次世代経営者の抜擢」です。その意味で、この数値は妥当だと思います。

 

最後にまとめてみました。

昔、ある中小企業の経営者に「人事権こそ権力だ。誰を抜擢するか俺次第。そんなコンピュータに俺の権力を渡すと思うか」と睨まれた経験を思い出します。

金融系企業は、〝失敗が出世に影響する〟こともあり、人事が様々な人事情報を探ることから『ゲシュタポ』と恐れられているケースも何度か遭遇しました。結果的に「人事に媚を売る」(嫌われない)人材が重宝されるという、おかしな状況を生み出したようです。まさに〝権力〟を握っていたのでした。

一方で、一代で世界規模まで拡大された創業社長は、「人事こそ、戦略実践の証。誰を抜擢するかで経営の意図が伝わる」と、FFSを活用してくれています。

つまり、『人事権』とは、権限であると同時に説明責任を必須とする結果責任を負う重要な経営判断なのです。

 

さらに、人には「向き/不向き」があり、「好き/嫌い」でやる気が大きく変わり、相性の良い/悪いもあることはご存じでしょう。つまり、「抜擢」や「配置」「編成」は成果に影響を与えるのです。その結果として「評価」が変わり「昇進」が早まり、報酬が変わる…。個人にとっても、戦略的意味を持つのです。

 

我々は、「科学は人に優しい」ことを前提にして、全ての人が活躍できる配置・異動・抜擢・編成に活用してもらいたいと思っています。異動が必要な時は説明責任も果たして欲しいのです。

権力であれ、戦略実践であれ、偏らずに正しく活用できれば「会社と人」は幸せになるのです。

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 16  B 9  C 14  D 17  E 3 / DAC

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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